文化交流で日中市民感情の改善を。第5回「日中友好コンサート」大阪で開催

中国・深圳で日本人男児が刺殺された事件が日中の市民感情に暗い影を落とすなか、一般社団法人日中文化振興事業団が文化交流で市民感情の改善をはかろうと「日中友好コンサート」を企画。10月5日に大阪市北区梅田「常翔ホール」で開催された。日本国内東京、広島、福岡などからの出席者290人、中国の北京市、武漢市、長沙市、雲南省、遼寧省からの出席者は36人の観客が、和太鼓演奏や昆劇など日中の舞台芸術を楽しんだ。

日本在住中国人と日本人有志らでつくる一般社団法人「日中文化振興事業団」(大阪市中央区)が日中相互理解の促進を目的に毎年開催しており、開催は2024年で5回目。今年は中国・深圳の日本人男児刺殺事件などで、特に日本社会の対中感情が悪化するなか、「日中平和友好」を掲げる同団体がプログラムに工夫を凝らし、「秋高気爽 中華人民共和国建国75周年記念」と題して企画。中華人民共和国駐大阪総領事館も後援した。ステージでは甲南大学和太鼓同好会甲による演奏に続き、馬頭琴奏者のアスハン氏が「スーホの白い馬」などを演奏。

飛び入り参加の変面ショーに続き、フルートと古琴の調べにのせたアンサンブル昆劇「牡丹亭」を日中文化振興事業団副理事長の秦爽氏自らが披露した。さらに和風ガールズロックバンド「天女神樂」(Amane Kagura)のミニコンサートが会場を盛り上げた。

この日、開会のあいさつに立った日中文化振興事業団代表理事で甲南大学教授の胡金定氏は、自身が長年、中国の老荘哲学書「老子」の研究や紹介に力を入れてきたことを紹介したうえで、「日本と中国の文化がこうした思想、哲学などを通じて非常に近いものであると知ってほしい」と呼び掛けた。

また、中国道教協会副会長、武漢市長春観の呉誠真方丈の中国語版『道徳経闡微』は胡金定教授の和訳による『詳解道徳経』が朝日出版社より出版され、呉誠真道士も中国から駆け付け、新刊発表会を行い、来場者全員に贈呈。呉誠真道士は「道教では「無為自然」ということを大変大事に考えている。この老子が説く人間の生き方は、宇宙に貫徹している原理原則に添った生き方をするということ。原理原則である「道(TAO)」の教えは、聖書と同じくらい世界的に浸透している」とスピーチし、「学べばより豊かに、幸せになれる」と日中共通の文化の大切さを訴えた。

石川博崇参議院議員は「今年は中華人民共和国建国75周年という節目の年に、日本と中国の友好を深めるこのコンサートが開催されることは、両国関係にとって大きな意義を持つことと思う。コンサートを通じ、日本と中国の強固な絆を築き、相互理解を深めていくと確信している」と語った。

中華人民共和国駐大阪総領事館の薛剣総領事も登壇。この日は「中国と日本は2000年の交流があり、互いに同じ文化の基礎の上に立っている。密接な関係がある」と述べたうえで、「国交正常化から52年経っており、全体的には大きな発展があったが、まだアンバランスな点もある。経済、貿易、科学技術に比べ文化の面ではまだまだ足りない」と指摘した。「内外の複雑な情勢を受け、日本のみなさんの中国に対する一般的なイメージが思わしくないことは皆さんご存知の通りだが、中国からの情報が日本社会に伝わる際、マイナス面ばかり強調されて、それよりも何倍も多いプラス面の情報が見えてこない。やはり人と人の交流が大事で、総領事館でも日本の皆さんの中国訪問交流プログラムを積極的に実施し、好評を得ている。中日友好は、雰囲気や感情論に流されず、まず相手のことを正確に知るところからスタートすることが大事だ」などと呼びかけていた。

一般社団法人日中文化振興事業団副理事長秦爽氏は閉会の挨拶で「本日のコンサートを通じて、日本と中国の民族の文化を融合し、音楽という共通言語を通して一つとなり、新たな友好の架け橋を築けたことを大変嬉しく思う。文化、芸術、音楽は国境を越え、人の心を勇気づけ、沈んだ気持ちを鼓舞し、快活にし、倒れた人をも再び立ち上がらせる大きな力を持っている。響き渡る歌、音楽に日中文化交流の素晴らしさを肌で感じることができたと思う。本日の「日中友好コンサート」を契機に、私達「日中文化振興事業団」は、更なる文化交流を積極的に推し進めることによって、相互理解が深まりゆき、文化に対する共通認識を持ち、広く、深く、日中の文化、芸術、音楽の交流活動を継続して参りたいと決意している。」と締めくくった。