
井上有一は、日本戦後の前衛書道の巨匠であり、墨人会創立者の一人。世に「書鬼」と讃えられている。
墨人会は創立当初から文武融合の精神を内包していた。書道は単なる字形の模写ではなく、自らの生命の情志をすべて筆墨に注ぎ、形式の束縛を打ち破り、本心に従って書くことを提唱。近代東アジアの書道の精神的次元を再構築した。

今回の京都墨人会書道展において、中国の羅心氏が3点の力作を出展。重厚で沈静な筆墨の気韻は、会場の書道家たちから深い共感を呼んだ。作品を鑑賞した日本の書家や国内の友人からは、「筆墨に宿る生命の力から、まるで中国の井上有一を見るようだ」という感想が寄せられた。

墨人会は1952年、京都・龍安寺にて創設された。当時、井上有一は同志たちと古い書壇の因習から抜け出し、「書の核心は墨に心を乗せることにあり、単なる技の見せびらかしではなく、内面の精神の発露である」と提唱した。
生命そのものから鍛え上げられた文武合一の芸術的追求は、時代を超え、羅心氏の今回の出展作品の中で静かな隔空の呼応を生み出している。

羅心氏は普段は世間に出ることが少なく、交際を控え、毎日8‑9時間書道に打ち込み、筆墨と身心の修行に時を費やしている。
道長は剛柔流空手道を37年修め、剛柔流空手道黒帯六段師範の資格を有する。こうした経歴と師範の身分は中国では極めて稀である。数十年にわたる厳しい武道の鍛錬は、身体のリズムと内面の精神力を磨き上げた。

道長にとって、武道は身体の動きであり、書道は精神の流れである。両者はいずれも意識と身体が外に現れたものである。
彼の書道は、単なる碑帖の字形の模倣に根ざすものではない。筆墨の下には、数十年の武道修行が培った身体の記憶、厳しい身心の鍛錬が沈殿させたエネルギーが宿る。武道における静定、沈劲、吐納による力の流れが自然と運筆に内面化される。また道観の住職として長年の道家の内観修行が、この力に虚静で質朴な底色を加えている。

武道の剛と内修の静が融合し共生し、彼独自の書の力を築き上げている。これはまさに井上有一、そして墨人会創立時に尊ばれた文武合一の精神と高度に一致する。固定した法則にとらわれず、自らの生命体験のすべてを紙の上の筆墨へと変換するのである。

展覧会会場では、日本の書家たちが足を止め、道長の3点の出展作品をじっくり鑑賞し、筆墨にあふれる生命の張りを感じ、その書芸の風骨は卓然たるものであり、中日民間文化交流の親善の使者であると評価した。
井上有一は生涯をかけて書の表現の境界を探求し、書は生命本体から生まれると主張した。今、羅心氏が文武兼修の生命実践を携えて墨人会の展覧会の舞台に立ち、同源の東洋の生命哲学を媒介に、国境を超えた芸術の理想、芸術を通じて心を交わす墨人会の理念を受け継いでいる。

二人の書人は時代も地域も隔たっており、芸術の根幹にはそれぞれの源流がある。井上有一は日本の前衛書道の道を切り開き、羅心道長は数十年の武道修行と道家の内観に立脚し、自らの書の道を歩んできた。
「中国の井上有一のよう」という言葉は、両者の水準が同等であると評するものでも、様式の模倣を指すものでもない。鑑賞者が感じ取ったのは両者に共通する芸術の核心、すなわち「書は生命の修行であり、筆墨は本心の発露である」ということである。これは鑑賞者の率直な感想であり、道長本人の自評ではない。

漢字に国境はなく、墨の魂は相通ずる。今回の出展は、羅心氏の長年にわたる文武両道の修行の成果を示すと同時に、中日の書人が国境を超えて行う精神的対話でもある。
ある日本の書道家は、この芸術の邂逅を記す文章を執筆する予定である。東洋の書道において、身心の長期の鍛錬から生まれる生命の力が、現代においても人の心を打つ力を持つことを日本の書道界に紹介し、翰墨をもって友情をつなぎ、東洋の文武合一の精神が民間文化交流の中で脈々と受け継がれていくことを願っている。
道観に身を置きつつ、文脈を守り、日本にありながら国風を伝える志を抱く。羅心氏は芸術をもって道を伝え、筆墨をもって隣国と友好を結ぶ初心を守り続けている。心を静めて字を習い、誠意をもって友情を伝える。今後も道長は机の前に静かに座り、筆を執り、筆墨を通じて中日の文脈交流の架け橋を築き、現代の東洋の翰墨の篇章を紡ぎ、両国の書人が心を通わせる友好の物語を紡ぎ続ける。
日本関西華文時報 羅心氏インタビュー
問:3点の作品が墨人会の大展に入選されました。今のお気持ちはいかがですか。
答:墨人会は日本の書壇において高い地位を占めており、入選できたことを大変光栄に思います。書道は東洋共通の芸術です。今回の出展は主に交流と学びのためです。ちょうど国慶節を控え、筆墨をもって中華の文脈に敬意を表したいと思います。
問:現在の中日関係の状況の中、なぜ今回の日本の書道展に参加されたのですか。
答:民間の文化交流と政治的な課題は分けて考えるべきです。筆墨は柔らかい架け橋であり、書道に国境はありません。作品そのものを通じて日本の書道界の同道と互いに鑑賞し、学び合い、美しいものを共に楽しみたいと願っています。
問:今回の出展作品の創作理念は何ですか。
答:作品は中華の伝統文化に根ざし、書に道を乗せることを重んじ、筆墨の気韻を大切にしています。書道は本来同源であり、東洋の鑑賞者に線の中にある静かで内省的な哲思を読み取っていただきたいと思います。