
ロンドン、京都、杭州を往還し、中国語、日本語、英語の多言語環境を軽やかに跨ぎながら活動する現代アーティストの黄西(イチコ)が、大阪国際金賞を受賞した。
大阪国際金賞は国際的な芸術表彰で、世界各国から応募された芸術作品を厳正な審査により選出する。黄西の作品は東洋の美意識を土台に、異文化での長年の生活体験を作品に落とし込み、日常の細やかな人間の内面を繊細に表現。多くの応募作品の中から審査員に高く評価され、金賞に輝いた。
今回の受賞は、中日芸術交流に尽力してきた彼女の活動への肯定である。黄西は多文化の境界を行き来し、アートを異文化対話の架け橋として創作を続けてきた。作品は暮らしの中の小さな生命の断片に焦点を当て、人のアイデンティティ、漂泊と安らぎを問いかける。大阪での受賞をきっかけに、彼女の芸術が日本の主流美術界に広く認知され、中日現代アート交流に新たな一頁を刻むものとなった。

ロンドン、京都、杭州という都市を往還し、中国語、日本語、英語の多言語環境を軽やかかつ切実に跨ぎながら活動する当代アーティスト、黄西(Ichiko)。彼女の作品には、私たちが日々の暮らしの中で見過ごしがちな「小さな断片」への優しい眼差しが満ちている。十余年に及ぶ海外生活によって中国語、日本語、英語の三つの言語環境を渡り歩いてきた彼女は、自身の身体感覚を「まだ着陸していない飛行機の中」に例える。その言葉通り、彼女のインスタレーションやパフォーマンスには、移動のなかで宙ぶらりんになった感情を繋ぎ止めるためのユニークな試みが詰まっている。例えば、日々の落書きやゲーム機、手書きのノートを空間に広げたパフォーマンス作品《世界是我的毯子(世界は私の毛布)》では、観客はアーティストのプライベートな部屋に迷い込んだかのような親密さを体験する。また、身近な日用品や抜け毛、親知らず、さらには母と共に蝋燭を灯す儀式的な作品などを通じて、女性としての経験や家族の記憶をそっと浮かび上がらせる。都市を生きる私たちの心にそっと寄り添いながら、日常を新鮮な視点で見つめ直させてくれる黄西の表現は、これからの東京のアートシーンにおいても非常に新鮮な響きを持っている。(黒瀬道子)